ブレンディング!
牧師 横山順一

 四月二十五日、榎本てる子さんが天に召された。かねてより療養中だった。
関西学院大学神学部准教授として以外にも、バザールカフェや性問題への取り組み、イエス団など、生前のその働きは多岐に及んだ。

直接教えや交わりを受けた多くの人に比べて、私など彼女が出会った人間の中で、ほんの端くれだった。事実、数度会っただけだ。 だが、学生らを引き連れて釜ヶ崎を何度も訪ねてくれたし、関西労伝の働きを固く支援してくれた。感謝は尽きない。
けれど、その思いだけで京都葵教会で営まれた葬儀に出かけたのではなかった。

そもそも、「葬儀」ではなかった。送られて来たお知らせには、「セレブレイション オブ ライフ」と銘打ってあった。

「いのちのお祝い」という意味である。単に榎本てる子さんの生涯を思う時ではなく、集まった人々それぞれが、命を想い、感謝する時であって欲しい、との、てる子さんの遺志に添ったのだった。

だから、虹を表す七色(それは性と命の多様性を象徴する)を始め、一般的な喪服ではなく、思い思いの平服で来てくださいと書かれていた。

どんな色彩がそこに展開するのだろう?ドキドキするような期待感。そしてそこに自分も一緒に身を置きたいという憧れ。それで京都まで出かけたのだった。

行ってみれば案の定、そこは色んな色でいっぱいだった。まるでサーカスのような華やかさと花畑のような鮮やかさに埋まっていた。

私など、紺のブレザーに、ブルーのネクタイが精いっぱいの冒険だったが、到底足りなかった。

式自体が取り立てて変わったものではなかった。「ウィシャル オーバー カム」が讃美歌の一曲とされたのと、カナダ合同教会の新使徒信条が告白されただけだ(だが、これが「私たちは一人ではない」というとてつもない凄い文言なのだ)。

式には八百名を超える人が集まった。前夜も三百五十名と聞いた。何より感動的だったのは、前夜には降り続いた雨が上がったあと、まるで天と地を結ぶように縦に虹が出たということだった。

「わたしは、ブレンディング・コミュニティを作りたいんや」と何度も夢を語っていた、とメッセージで聞かされた。

ブレンディングとは、かき混ぜることを意味する。色々な人々がかき混ぜられ、ごちゃまぜにされるコミュニティ。つまり同質ではなく、画一的でもなく、それぞれのカラーを持ったまま、みんなが一つにされる世界、ということだろう。
何と素敵な世界!

明るくて、多くの人を広く受け入れて生きた榎本てる子さん。五十五歳は、いかにも短く惜しい。

でも、ごちゃ混ぜって素敵な世界なんやと私も賛同する。彼女ほどのことはできそうにはないけど、夢を聞かされた一人として、私も私なりに、私の生きる場所をブレンディングして行きたいと思っている。