No.69

「ころっけ、偉い恩」  牧師 横山順一
 
 私は大のコロッケ好きである。このあいだ、何故そうなったかを考えていて(コロナ禍で閉じこもっていると暇なことを思いつくものだ)、ふと、そうだ!絵本の「コロッケライオン」の影響だと思い当たった。
 家庭の事情で、五歳まで母方の祖父母の家で暮らした。年の離れた姉や従妹たちと一緒に。
 岡山の田舎はまだまだ貧しくて、絵本などはほとんどなかったように思う。
 それなのに、「コロッケライオン」だけは、妙に覚えているのだ。食べた記憶もないのに。
 後に市街地に引っ越して、母が買って来たスーパーのコロッケを食べたのが初めてだったろう。
 三つ子の魂何とやら。たちまち魅せられた。旨さは既にコロッケライオンから教え込まれていた。
 ただし、ウスターソースをじゃぶじゃぶかけるのだから、ふやけたソースの味しかしないのだが。
 いや、問題はコロッケライオンだ。ネットで調べた。何と、作者は、あの馬場のぼるさんだった!
 全然知らなかった。私にとって馬場さんは「十一ぴきのねこシリーズ」で知られる絵本作家としてだ。
 始まりはマンガだったのだ。ウィキペディアには「手塚治虫、福井英一とならび児童漫画界の三羽ガラス」と呼ばれたとあった。
1955年の第一回小学館漫画賞を「ブウタン」という作品で受賞している。
肝心のコロッケライオンは、「ころっけらいおん」のタイトルで、
1962年、小学館の「学習と科学」誌に掲載されたのだ。
 その頃私は三歳である。絵本はなかったが、従妹が恐らく「学習と科学」を買ってもらったに違いない。
 それを読んだのだ。というより、まだ字が読めないから、従妹が読んでくれたのだ。
 カタカナでなく、ひらがなで記された「ころっけらいおん」。既にやさしい世界がそこにある。
 動物園にやってきた子どものコロッケをたまたま食べて、やみつきになる。コロッケはその男の子のおばあちゃんの手作り。らいおんは、男の子の家を訪ねる・・・。というストーリーだそうだ。突拍子もないが、現代にはまずないほのぼの感にあふれた作品である。
 その筋書きまでは覚えていない。三歳児の脳に刻まれたのは、らいおんが食べるほどコロッケは旨い代物という禁断の預言だった。
 いつだったか、先輩牧師に「旨いモン食わせてやる」と連れて行かれた高級店。
 何でもいいから注文しろ、と言われて頼んだのが「コロッケ」。お前は、もう二度と連れてゆかんと先輩はつぶやいた。
 好きなもので怒られてもどうしようもないではないか。それに、私だっていつまでもコロッケ一辺倒ではない。メンチカツも大好きだ。
 ダニエルはライオンの洞窟に投げ込まれたが、神さまの力で何の危害もなく助かった。
 私は、馬場のぼるさんのおかげで、ライオンを通してコロッケが好きになった。偉い恩だ。
 だいぶレベルが違う。が、どちらも神さまの平安、それは間違いない。