「作者亡きあと」No.84 牧師 横山順一

 二〇二一年に亡くなった著名人のうち、漫画家の巨頭、白戸三平さん(享年八十九歳)と、さいとう・たかをさん(八十四歳)は、漫画大好きの私には寂しいお別れだった。

 お二人の代表作である「カムイ伝」、「ゴルゴサーティーン」は、漫画史上の金字塔だと思う。
ついでに、四コマ漫画家のサトウサンペイさん(九十一歳)の「フジ三太郎」も、子どもの頃は難しくて分からないなりに、何か魅力があった。
この三人には、「3」がどこかで共通している。たまたまだろうが。同じ作品を長く描き続ける秘訣は何だろう。
現役では「釣りバカ日誌」も長い。四十二年になる。作・やまさき十三、画・北見けんいちコンビは、共に八十歳だ。まだまだ続いて欲しいと願っている。

 「ゴルゴシリーズ」は、もう五十三年、同一作品で最も発行巻数が多いギネス記録となっている。
もともと分業体制で描かれて来た同作品は、作者を失ってなお、スタッフらによって今後も続くという。

 その意味では、先行の「サザエさん」は凄い。作者の長谷川町子さんが一九九二年に亡くなっても、一九六九年からの放送が続くアニメは、これもギネス世界記録なのである。

 先日、かなり久しぶりにテレビで観た。次週予告の最後の、サザエさんとのジャンケンが懐かしかった。
 あれはいつ頃から始まったのか。マンガそのものは、四コマの新聞連載で、始まりは一九四六年というから、まさに戦後すぐだった。
 時代に合わせて手入れされながら現在に至っているものの、基本コンセプトは、戦後すぐと変わっていない。
 例えば、カツオの丸刈りやら学帽姿。今は超珍しい。珍しいというより、まずないのはワカメ。あのおかっぱやパンツ丸見えのスカートは、絶滅した。

 着物に割烹着のフネさんもいないし、黒電話も消えた。大体、波平・マスオ男性両名のサラリーマンは良いとして、フネ・サザエさん両名の専業主婦の家族構成は、完全に無理がある。

 それより驚くのは設定年齢で、波平五十四才、フネ五十二才、マスオ二十八才、サザエさん二十四才だという!ウッソ~!あのアナゴさんに至っては二十七才というから絶句・・。

 正直言って、もう感覚がまるで違う。こんな家族、日本のどこにもいないと思う。
 それでも続いているのだ!何故なのか?どこにもないけど、何となく感じる温かさ?ユルさ?理由が分からない。
 普通、作者が亡くなったら、おしまいなのだ。どんなに残念でも、そればかりは受け入れざるを得ない定めだ。

 でも、考えてみたら、イエス亡きあと、何十年も経って書かれた聖書を私たちは読んでいる。
 完全無欠の聖書ではない。間違いだって少なくない。誰が書いたのか不明の書物もいっぱいだ。
 なのに時代を超え、教えられ、示され、導かれている。人間側によるのではない。神の力としか言えない。新年もきっと。