《説教要旨》 『命への旅』 大澤宣 牧師
マタイによる福音書2章13~23節
イエス・キリストが弟子たちを宣教に送り出される時、「蛇のように賢く、鳩のように素直になりなさい」と言われます。作家の佐藤優さんは『聖書の名言』という本の中で、「はとのように素直」に付き合えるような人間関係を広げていくことが大切だと言われました。確かにそのとおりですが、この世界はそういうわけにはいきません。世界中で、住むところを追われている人たち、命の危険にさらされている人たちが多くおられることを思わされます。
マタイによる福音書は、クリスマスの出来事につながる個所として、新しい王、イエス・キリストの誕生に逆上したヘロデ王が、ベツレヘム周辺のこどもたちを虐殺したという凄惨な出来事を記しています。今の時代にあっても、災害の地におられる方、戦乱の地におられる方のことを思い、この時代にも多くの悲惨さがあることを思わされます。
一枚の写真があります。ジョー・オダネルというアメリカのカメラマンが撮った写真です。第二次大戦直後の長崎で撮られた写真から、戦争の犠牲になったこどもたちが、なぜ自分たちがこのような目に遭うのかと問いかけています。そして、何度もその写真を見ているうちに、イエス・キリストはここにおられるのではないだろうかということを思ったのです。
イエス・キリストは、ベツレヘムで殺されていったこどもたちを背負っていかれたのではないか。そして、ご自身が十字架への道を歩まれたのではなかったかと思わされたのです。
1月6日の公現日をもってクリスマスを祝う季節が終わろうとしています。この時に、パール・バックの『わが心のクリスマス』という本に書かれている出来事を心に刻みたいと思います。
クリスマスの日、門前に横たわっている人々の中に一人の赤ん坊が生まれました。その親子には泊まる場所もなかったので、パール・バックの母親がその人を家の中に入れて、赤ん坊が生まれたのです。
パール・バックはこのように語ります。「クリスマスよ、きたれ!大きくなった息子たちが、暗い未来に向かって命を落とそうとしているのだ!キリストよ、そのようなことを避ける道を教えてください!私たちは、戦うことには長じているが、平和への道の選び方に劣るものです。私たちは、安易な道を選びがちだが、それは許されてはならないのです」。
クリスマスを迎え、2025年という新しい年を迎えました今、私たちがどのような道を進もうとしているのかを思わされます。主にある希望を携えて、命への旅を進んでいくものでありたいと願います。