《説教要旨》『決別からの出発                 大澤宣 牧師

 ルカによる福音書24章44~53節

 私たちの教会と関係の深い頌栄短期大学を設立されたアニー・ライオン・ハウ宣教師は、1887年、日本に来られました。アメリカから、太平洋を越えて、日本というアジアの小さな国に伝道に来られる、教育の働きに来られるということ。聖霊の働きがなければ考えられないことです。

アジア・サンデーという日を迎えています。日本も含めて、アジアの国々に福音が知らされたこと、今もさまざまな状況の中におられる方々の上に神様の恵みがありますように、そのために働かれる働きの上に祝福がありますようにと祈りたいと思います。

イエス・キリストが十字架の死から復活され、弟子たちを宣教の働きに送り出される場面です。イエスは、弟子たちの心を開いて言われました。メシア、救い主は、苦しみを受けて死ぬ。しかし、三日目に死者の中から復活する。そして、罪の赦しを施す悔い改めを伝える。それは、あらゆる国の人々に、その名によって宣べ伝えられるようになる。

イエスは、イースターから40日目に天に昇られました。地上の人たちのところを離れて行かれました。それは、一つの決定的な別れです。そこで、イエスと弟子たちの一つの出来事が終わって、べつの出来事が始まります。イエスの姿が見える形で人と共にいるということから、イエスの姿は見えないけれども私たちと共にいるということが始まるのです。

 希望ヶ丘教会の伝道師、桃山学院大学の教授であった蔵田雅彦さんは、アジアの諸教会と日本の教会を結ぶ働きをしてこられました。この方が、家族に手紙をのこしました。それは家族への感謝の言葉であり、これからを自由に生きていってくれるようにとの訣別の言葉でした。死という、決定的な別れに対して、人は無力かもしれません。しかし、この決定的な別れを味わう人たちの言葉は、生と死の現実にふれながらも、訣別からの出発の言葉であるのだと思います。

 私たちは毎日新しい生活に導かれています。これからどうなるのかと不安を持つ私たちですが、その私たちにイエスの祝福が届けられているのです。

 「一日は白い紙、消えないインクで文字を書く あせない絵の具で色をぬる 太く、細く 時にはふるえながら 一日に一枚 神様がめくる白い紙に 今日という日を綴る」(星野富弘『鈴の鳴る道』)